長期優良住宅の認定基準・メリット・デメリット・2022年の改正点

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目次

国が認定する「長期優良住宅」とは

 少子高齢化の進展や環境問題の深刻化等の社会経済情勢の変化にともない、従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換が求められています。

 この状況を踏まえ、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)の普及を促進するため、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が、平成21年(2009年)6月に施行されました。

断熱うさぎ

一言でいうと「長期優良住宅」は、長く住み続けられる性能の高い住宅のことです。

性能が高い住宅と認められるには、国が定めた基準をクリアし行政の認定を受ける必要があります。

次のパートで詳しく説明します。

長期優良住宅の「認定基準」

長期優良住宅は大きく分けて以下のA~Dの5つの措置が講じられている住宅を指します。

国土交通省HPより

「戸建住宅」の場合、以下の項目を満たす必要があります。

  1. 劣化対策
  2. 耐震性
  3. 維持管理・更新の容易性
  4. 省エネルギー性
  5. 住居環境
  6. 住戸面積
  7. 維持保全計画
  8. 災害配慮

① 劣化対策

劣化対策は、住宅性能表示制度の「劣化対策等級 3」相当を確保する必要があり、さらに追加措置が求められます。

国土交通省HPより
国土交通省HPより

上記のイラストにあるように、3世代(75~90年間)にわたり住宅を使用するための「劣化対策等級3」の基準を満たし、さらに追加措置として点検口を設ける必要があります。

② 耐震性

耐震性は、住宅性能表示制度の「耐震等級 2」相当以上を確保する必要があります。

※長期優良住宅の認定基準として等級 3」は求められません。長期優良住宅を取得しているからと言って、耐震等級の最高等級を取得しているわけではないので、住宅購入時には注意が必要です。

国土交通省HPより

③ 維持管理・更新の容易性

維持管理・更新の容易性は、住宅性能表示制度の「維持管理対策等級 3」相当を確保する必要があります。

国土交通省HPより

④ 省エネルギー性

省エネルギー性は、住宅性能表示制度の「断熱等級 4」相当を確保する必要があります。

国土交通省HPより

※省エネルギー性については2022年6月時点の情報になります。

2022年4月に住宅性能表示制度で「断熱等級5」と「一次エネルギー消費量等級5」が新設されました。

2022年10月以降は、新設された「断熱等級5」と「一次エネルギー消費量等級6」の基準を満たす必要があります。

国土交通省HPより

⑤ 住居環境

 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第6条第1項第3号に、長期優良住宅の認定基準の1つとして、「建築をしようとする住宅が良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること」が定められています。

具体的な対応としては、地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内に建築する場合は、これらの内容と調和を図る必要があります。※詳細は、申請先の所管行政庁に確認が必要になるのでご注意ください。

⑥ 住戸面積

良好な居住水準を確保するため、必要床面積が定められています。

一戸建ての場合は75㎡以上の面積が必要です。

(注意) さらに、少なくとも「ひとつの階」の面積が、階段部分を除いて「40㎡以上」必要です。

⑦ 維持保全計画

以下の部分・設備について定期的な点検・補修等に関する計画策定が必要です。

・住宅の構造耐力上主要な部分
・住宅の雨水の浸入を防止する部分
・住宅に設ける給水又は排水のための設備

⑧ 災害配慮

 各自治体で令和4年(2022年)4月より長期優良住宅の災害配慮対応が始まっております。施行日以降、計画地が以下の区域内にある場合は、認定を受けることができないケースがあるので注意が必要です。

長期優良住宅の取得が認められない区域等については、下記表にまとめました。

(注意)国の基本方針に基づき各自治体が認定詳細を定めておりますので、建築予定地が区域に該当する場合は各自体への事前の確認が必要です。

スクロールできます
区域の種類国の基本方針
(1) 地すべり防止区域認定しない
(2) 急傾斜地崩壊危険区域認定しない
(3) 土砂災害特別警戒区域認定しない
(4) 災害危険区域認定しない又は、必要な措置等
(5) 津波災害特別警戒区域認定しない又は、必要な措置等
(6) 浸水被害防止区域認定しない又は、必要な措置等
(7) 洪水浸水想定区域必要な措置等
(8) 雨水出水浸水想定区域必要な措置等
(9) 高潮浸水想定区域必要な措置等
(10) 土砂災害警戒区域必要な措置等
(11) 津波災害警戒区域必要な措置等

区域等の調査方法については下記の記事で取り上げております。

  長期優良住宅の認定を受ける「メリット」

税制優遇

認定を受けた長期優良住宅は、以下の税制優遇を受けることが可能です。

東京都住宅政策本部HPより ※適用要件や手続き等の詳細については、それぞれの担当窓口にご確認ください

住宅ローン金利がお得に

長期優良住宅の認定を受けると、住宅ローン【フラット35】の、【フラット35】Sを利用することができます。【フラット35】Sは、借入金利が当初5年間「0.5%」、6年目から10年目まで「0.25%」に下がります。

フラット35公式HPより

令和4年(2022年)10月よりフラット35の基準が変更になるので、ご注意ください!

フラット35公式HPより

地震保険料の割引き

「長期優良住宅」は、求められる耐震性として等級2以上が必須です。

地震保険の割引制度で耐震等級2は「30%」、耐震等級3は「50%」の割引を受けることができます。

スクロールできます
地震保険料の割引条件割引率
耐震等級 230%
耐震等級 350%

評価基準が国であるため信頼性が高い

長期優良住宅は耐震等級・省エネ等級・維持管理等級・劣化対策等級など、永く住み続ける大切な要件を網羅しています。

永く住み続けるための、大切なポイント!

・外壁通気工法等により建物の耐久性が向上するため、建物が長持ちする。

・長期優良住宅の認定には、構造計算が必要であり構造面で安心できる。

・2022年10月以降には省エネ等級の要求がワンランク上がるため、以前の基準より光熱費用が軽減され、より快適な生活ができる。

・建物のメンテナンスが容易にできる。

昨今、十分に性能の高い一般住宅が普及してきますが、ハウスメーカー・工務店などの提案は自社の独自基準であることが多く、比較検討が難しい場合があります。

その点、「長期優良住宅」は住宅性能表示制度を基準にしており、ハウスメーカー・工務店の独自基準ではないため、国から安心・安全で永く住める住宅であるとの「お墨付き」をもらえることは、大きなメリットです。

長期優良住宅の認定を受ける「デメリット」

国土交通省HPより

長期優良住宅の申請に費用がかかる

長期優良住宅制度の申請は、通常の確認申請書のほかに、認定申請書や構造計算書・省エネの計算書など別途書類が必要です。また書類作成のための構造計算・省エネ計算費用も生じるため、審査・認定に関する手数料がかかるケースが一般的です。

申請手数料と各種計算・書類作成、申請代行すべて含めて20万円~30万円が一般な相場ですが、ハウスメーカー・工務店によって金額はバラバラです。
特に行政や民間確認申請機関に支払う申請手数料(木造2階建ての場合、約5万~6万円)が込みなのか、別途なのか、注意して見積書を確認するようにしましょう!

建築コストが割高になったり、工期が長くなる場合がある

長期優良住宅を取得するしないは別にして、できたら標準仕様で認定規準をクリアしているハウスメーカー・工務店に建築をお願いしたいところです。

もし、標準仕様で認定基準を満たしていないハウスメーカー・工務店に長期優良住宅の認定をお願いする場合、基準クリアのためのコストが割り増しになる場合があります。また、工期も数週間、会社によっては数か月長くかかってしまう場合があるので工期に余裕がない方は注意が必要です。

建築コストと建築工期は家づくりには大切なことなので、長期優良住宅の実績があるかどうか・建築コストはどうなるのか・工期が極端に長引かないかなど、ご自身が納得いくまで確認するようにしましょう!

メンテナンス履歴の作成・保存が必要

長期優良住宅制度は、申請時に維持保全計画を立案し計画内容を行政に提出します。入居後はご自身で維持保全計画通りに適宜対応していかなくてはなりません。(さらに大きな災害に見舞われた際は、臨時の点検が必要です。)

点検・修繕は屋根や床下の状況など、確認が難しい項目もあり、業者(建築してくれた施工会社が多いです。)にお願いするケースも出てきます。維持保全計画を実行するには、業者への依頼や、修繕記録を作成・保存する手間が生じます。

また、点検・修繕を行ったら、その記録を保管する義務があります。記録は行政に提出する義務はなく、求められた際に報告すれば大丈夫です。(報告を求められた際、実施していないと判断された場合、最悪、長期優良住宅の認定が取り消される可能性もあるため注意が必要です。)

国土交通省HPより

長期優良住宅は「施工会社」の選定が、とても大切!

施工会社を選ぶ際には、以下のポイントをおさえましょう。

  • 引き渡し後の保証、アフターサービス内容
  • 担当者の人柄や提案力
  • 過去の長期優良住宅認定取得の実績数

長期優良住宅認定取得にかかわらず、引き渡し後こそハウスメーカー・工務店など施工会社の真価が問われます。保証、アフターサービスについてはご自身が納得いくまで、よく確認しましょう。

担当者の人柄や提案力も大切なポイントとなります。メリットだけを伝えてくる担当者や建築・不動産の知識・経験に関してプロ意識が不足している担当者が窓口の場合、会社が大きくても、トラブルの可能性が高くなるので注意が必要です。(施工会社選びは誠実な担当者と出会うことが大切です!)

仕事・勉強・スポーツ、何事も最初からは上手くいきません。すべては数を重ね洗練されていきます。長期優良住宅の設計・施工も過去の実績数に応じて精度は高まります。まずは過去の認定実績数を質問してみてはいかがでしょうか。

長期優良住宅 Q&A

認定申請を連名で行うことは可能か。

可能である。連名で申請する場合、第一面の申請者記載欄に記入し、書ききれない場合は別紙に記載がある旨表記して別紙に記入するなどすることとなる。また、別紙に記載する場合についても第一面の記載事項を記載することになる。(住所、氏名、押印)

住宅履歴情報についてどのようなものを保存する必要があるのか。

国土交通省のホームページ(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000006.html)に掲載された「認定長期優良住宅における記録の作成と保存について」を参照。

点検の時期が10年を超えないとする基準日が建築の完了とありますが、引渡し日や建築基準法の検査済証の交付日を起算日として考えてもよいか。

引渡し日ではなく、建築工事の完了した日が起算日となる。

維持管理段階の所管行政庁の検査はどのように行われるのか。

所管行政庁の検査の実施はない。所管行政庁が報告を求めたときに、認定計画実施者は維持保全の状況について報告することとなる。

記録の保存については「紙」でもいいのか。

その通りである。

国土交通省HPより抜粋

まとめ

長期優良住宅の認定取得要件の「まとめ」です。

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性能項目等基準の概要
劣化対策住宅性能表示制度の「劣化対策等級 3」相当

点検口等の設置
耐震性住宅性能表示制度の「耐震等級 2」相当
維持管理・更新の容易性住宅性能表示制度の「維持管理対策等級 3」相当
省エネルギー性住宅性能表示制度の「断熱等級 4」相当
ただし、2022年10月以降は
「断熱等級5」「一次エネルギー消費量等級 6」が必要
住居環境地区計画等の環境制限と調和が必要
住戸面積一戸建ての場合は75㎡以上の面積が必要

少なくとも「ひとつの階」の面積が、
階段部分を除いて「40㎡以上」必要
維持保全計画構造・設備について点検・補修等に関する計画策定
災害配慮災害指定区域では認定が取得できない場合がある

長期優良住宅は手間もコストもかかり、入居後は、維持保全計画に沿ったメンテナンス・点検が必要になります。

その代わり、耐震性能や省エネ性能、維持管理に優れているため、永く住み続けられる可能性が上がります。
また、税金優遇・地震保険料の割引・住宅ローンの金利優遇など、金銭面でもメリットも見逃せません。

昨今、認定を取得していなくとも性能の良い戸建てが増えてきているため、長期優良住宅の認定取得は悩ましいところです。

ただ、「持続可能な社会」の定義として、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発(が行われた社会)」との言葉があります。

断熱うさぎ

長期優良住宅は、現在の住まい価値向上だけではなく、将来への価値継続の架け橋です。
「子供や孫に財産として土地だけでは無く、家を残してあげたい」とお考えがありましたら、信頼できる建築会社をさがして、相談されてみるのはいかがでしょうか。

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